2007年 12月 26日
ミルをめぐる冒険(抜粋) |
小犬は目を閉じて背中を丸め、彼女の腕に首をそっと載せた。僕は、コーヒーカップをシンクの中に放り込み、請求書をほうきがわりにして、テーブルの上に散らばった珈琲の微粉を一ヵ所に集めた。焙煎のときに出た煙で、目の奥がちくちくと痛んだ。
「細かいことはあなたの机の上のメモに全部書いておいたわ。焙煎の手順とか、抽出の仕方とか、そんなことね。わからないことがあったら電話して」
「ありがたう」
「ディッティングミル欲しかった?」
「いや」と僕は言った。「ディッティングミルなんて欲しくないよ」
「私はずいぶん迷ったのよ。でもこうなるんなら、それでよかったのね。それともディッティングミルあったらこうならなかったと思う?」
「ディッティングミルがあっても離婚する夫婦はいっぱいいるよ」
「そうね」と彼女は言ってザッセンハウスの手廻しミルをしばらくいじっていた。
「ザッセンのミルは今でも好きよ。でも、きっとそういう問題でもないのね。それは自分でもよくわかっているのよ」
(・3・) <おわり
「細かいことはあなたの机の上のメモに全部書いておいたわ。焙煎の手順とか、抽出の仕方とか、そんなことね。わからないことがあったら電話して」
「ありがたう」
「ディッティングミル欲しかった?」
「いや」と僕は言った。「ディッティングミルなんて欲しくないよ」
「私はずいぶん迷ったのよ。でもこうなるんなら、それでよかったのね。それともディッティングミルあったらこうならなかったと思う?」
「ディッティングミルがあっても離婚する夫婦はいっぱいいるよ」
「そうね」と彼女は言ってザッセンハウスの手廻しミルをしばらくいじっていた。
「ザッセンのミルは今でも好きよ。でも、きっとそういう問題でもないのね。それは自分でもよくわかっているのよ」
(・3・) <おわり
by niagara-cafe
| 2007-12-26 20:08
| ■与太話■
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Comments(6)
つづきが読みたいデス!
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niagara-cafe at 2007-12-27 17:42
まるいちさん
村上春樹・著「羊をめぐる冒険」を思いつきでパロっただけなので、つづきは是非、「羊をめぐる冒険」を手にとってみてください。ちなみに「風の歌を聴け」→「1973年のピンボール」→「羊をめぐる冒険」→「ダンス・ダンス・ダンス」という順に読まれることをオススメします。
村上春樹・著「羊をめぐる冒険」を思いつきでパロっただけなので、つづきは是非、「羊をめぐる冒険」を手にとってみてください。ちなみに「風の歌を聴け」→「1973年のピンボール」→「羊をめぐる冒険」→「ダンス・ダンス・ダンス」という順に読まれることをオススメします。
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まるいち
at 2007-12-27 23:50
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niagara-cafe at 2007-12-28 17:28
まるいちさん
お分かりいただいたようでよかったです。
お分かりいただいたようでよかったです。
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Imagine-Master
at 2007-12-28 20:55
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ザッセンハウスの手廻しミル、欲しかったのですが、
倒産してしまったので、プジョーの手廻しミルを使っています
倒産してしまったので、プジョーの手廻しミルを使っています
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niagara-cafe at 2007-12-29 18:11